生まれも育ちも東京の二人が、
会社員からピーマン農家へ

好川さんご家族(神奈川県から移住)プロフィール

名前・年代:好川迅さん・美香さん(40代)・紬さん(小学生)
住まい:山エリア(野津地域)
前住地:神奈川県
臼杵市民歴:2019年~



移住のきっかけと、どのような準備をしたか教えてください。
迅さん)二人とも生まれも育ちも東京で、結婚後は神奈川県に家を購入して都内に通勤していました。子どもを保育園に預けて共働きしていたのですが、帰宅が遅くなることもあり、保育園で夕飯を食べさせてもらうこともありました。
就学をきっかけに育児の環境変化があるなか、今まで以上に家族で過ごす時間が必要と考え転職を検討したのですが、住宅ローンの返済もありましたし、収入と支出のバランス、雇用環境を含めた5年後10年後をイメージしたときに、都市部で転職をしても家族で使える時間に対しての大きな変化はないように思いました。家族の時間をとれるように働き方を変えたかったのと、「いつか農業をやりたい」と思っていたのもあって、就農についても調べるようになったのが最初のきっかけです。
妻も自分も、農業とは無縁の中で育ってきましたし、家庭菜園以外の経験がなかったのですが、就農について調べるうちに、国や県、市などの様々な補助制度やサポート体制など、就農に向けた充実した補助制度があることを知ったのと、年齢制限があることもわかったので、「動くなら今!」と思い、具体的な準備を始めました。

農作物を作るのは産地で行うのが近道と思い、就農と移住をセットで考えて、作物については、初年度から一定の収入が得られること、妻も関われるように体力的負荷が少ないこと、などを要件として絞り込みを行い、産地から複数の候補地を選定して、その中から移住先を探し始めました。
就農や作物の絞り込みのときは、全国新規就農相談センター(※1)や農業EXPOに足を運び、移住先については、県が開催する移住イベントに参加して、就農と移住についての質問や相談を重ねました。
全国新規就農相談センターでは、「どちらか片方だけではなく、二人が同じ方向性で始めることが大事だよ」と家族で就農を始めるときのアドバイスなどもいただきました。

美香さん)私は、虫をあまり見かけない住宅地で育って、バッタが飛ぶことを初めて見たのも臼杵に来てから。そのくらい虫が身近ではなかったから苦手で、土いじりもしたことないし興味もなかったので、夫から「就農」ときいて驚きましたが、話し合いや、一緒に就農・移住イベントに参加するなかで気持ちが揃っていったので「家が売れたら」という条件でOKをしました。


臼杵市を知ったきっかけと、臼杵市に決めた理由を教えてください。
迅さん)大分県内で就農地を探す中、臼杵市はアグリ起業学校(通称:ピーマン学校)(※2)、ファーマーズスクール(※2)など研修制度も充実していることを知りました。農業を生業としつつも、家族の生活をより豊かなものにしたかったので、自然が豊富なことも移住地を決めるときのポイントでした。

臼杵を候補地のひとつに決めて、2018年7月、夏休みを利用して臼杵市の移住体験施設「おためしハウス」に滞在しました。3日間という限られた期間の中で、市役所の方が移住に関すること、子育て環境、就農に関すること、これらを余すことなく見聞きする機会を提供してくれて、安心してこの地へ移住することができると感じられたことが大きかったです。
実際に滞在をしてみて、海があり、山があり、川もある。とにかく豊かな自然にも魅力を感じました。すこし足を延ばせば、大分市に出られるし、付近の温泉も楽しめたりと、理想的な立地環境だと思いました。

美香さん)子どもが産まれる前は二人で船釣りに行っていて、妊娠中も行っていたので、海が近いのは嬉しかったです。


移住前の準備期間はどのくらいでしたか? また、不安に思っていたことなどはありましたか?
迅さん)準備期間としては、およそ1年弱です。2018年3月頃から検討を開始。同年7月に臼杵市初訪問。9月にピーマン学校の短期研修に参加。2019年1月に仕事を退職して、2019年2月に臼杵市民になりました。

美香さん)不安に感じていたこととしては、娘が生活環境の大きな変化に順応することができるかというのは気になりました。

迅さん)そのほかに、妻も子どもも首都圏での生活しか経験がないため、これまでの生活環境(特に衛生面の状況など)をある程度維持した暮らしができるか、ということも気にしました。それと、自分の趣味の工具を置ける倉庫も必要だったので、希望になるべく合う生活ができるかを重要視して、自分一人の日帰りでの物件探しも含め通算で6~7回ほど臼杵市を訪れ、家探しにはかなり時間を費やしました。

美香さん)ピーマン学校の入校も決まり、家の売却も決まり、臼杵での住まいも決まり、「不安が全くないわけではないけど、暮らしていけそう」という条件が揃ったので、引越しの準備に入りました。

<好川家の就農・移住までのスケジュール>


ピーマン学校の研修


移住を周りに伝えたときの反応はどうでしたか?
迅さん)会社の人は「自分たちにはできないけど羨ましい」「家族はOKなの?」といった反応でした。

美香さん)私の親は最初大反対でしたけれど、最終的には認めてくれました。友達には驚かれましたが、「迅さんならやりかねないね」と言われました(笑)


普段はどのように過ごしていますか?
迅さん)繁忙期は農作業に掛かりきりになりますが、そうじゃないときは、午前中農作業をして、子どもが帰宅してから臼杵市の総合公園(※3)に行ってフリスビーをしたり、佐伯市の総合運動公園(※4)でボルダリングをしたり、温泉に行ったりしています。
買い出しは、臼杵市のスーパーなどが集まっているエリアに行くことが多いです。そのほかは、隣の三重町や大分市にあるトライアル(※5)に行ったり、車で20分ほどで着く大分市のパークプレイス(※6)にも行きますね。
最近は、原木しいたけの栽培にチャレンジしてみようと思って、近所の方と一緒に樹の切り出しをして駒打ちをしてみました。




「うすき暮らし」は如何ですか?
迅さん)移住前は仕事の時間が基準になっていましたが、今は子どもの時間が基準になりました。行事も、これまでは土日だけの参加が多かったのですが、平日も参加できるようになって、家族で過ごせる時間が増えました。あと、睡眠時間も増えましたね。

美香さん)子どもと過ごせる時間が増えたことは実感しています。それから、神奈川にいたときは、私、玄関前に蜘蛛がいるだけで家の中に入れなかったのですが、少しずつ虫に慣れてきて、今はピーマンのためならカメムシも潰せるようになったんですよ(笑)

迅さん)去年はカメムシの数がすごかったね。

美香さん)すごかった。それと、娘が新しい暮らしに順応できるか心配していましたが、最初は友達を思い出して泣いていたけれど、徐々にこちらの友達もできて、半年たった頃には大分弁で寝言をいっていて驚きました。
また、娘の習い事を通じた学年を超えての交流が、子ども同士だけではなく親同士にも生まれて知り合いが増えました。

迅さん)着衣状態の泳ぎの体験ができたり、焼き芋を作ったり、キウイ収穫をしたり、身近な自然を活かした体験を、子どもがいろいろとできていますね。
それと、東京の友達にピーマンを送ったら好評でした。ピーマンの収穫量については、もっと満足のいくようにしたいです。


キウイ収穫のお手伝い


芋ほり体験


野津町のハロウィン


臼杵のおすすめスポットがあったら教えてください。
迅さん)家族でも楽しめる多数の釣りスポットがあるのは魅力です。あとは、臼杵市総合公園、浜公園(※7)。桜のシーズンは、吉四六ランド(※8)の桜も見てほしいですね。

美香さん)図書館で開かれている読み聞かせのイベント(※9)も楽しいですよ。


堤防で釣り


浜公園で海遊び

圃場の整備~収穫の風景
Before

After

Before

After

好川さんの農業についてのお話をもっと知りたい方はコチラもどうぞ!
>迅さんから「就農したい」と言われた時に「収納? 家の片付けがしたいの?」と思った、美香さんのエピソードや、ピーマン学校のカリキュラムの説明も読める、お二人のインタビューです。
「マイナビ農業」
https://agri.mynavi.jp/2020_07_31_126099/

>圃場の広さなどについて迅さんがお話しています。
「九州・沖縄・山口と出会う HELLO NEW LIFE」
※アーカイブ動画で見られます。「テーマ6農業・漁業・林業に関わる仕事をしたい人」コーナーです。
https://hello-new-life-9.smout.jp/


※1…全国新規就農相談センター:新規就農を考える方の相談窓口があるほか、農業体験や農業の求人情報の紹介なども行っている。
https://www.be-farmer.jp/
※2…アグリ起業学校・臼杵市ファーマーズスクール:独立・自営ができる「農業経営者」を育成する制度。アグリ起業学校(ピーマン)は研修専用施設で1年間、ファーマーズスクール(有機農産物・ピーマン・イチコ)は市が認定した就農コーチのもとで1~2年間の研修を行う。
※3…総合公園:臼杵エリアにある、体育館、野球場、テニスコート、などもある公園。こども公園では、長いすべり台のある大型遊具のほか、草スキーも楽しめる広場もある。
※4…佐伯市総合運動公園:佐伯市にある、体育館、プール、野球場、陸上競技場、テニスコートやラグビーに使用する多目的広場やグランド、弓道場、アーチェリー場、相撲場、遊具広場などがある施設(臼杵市中心地域・野津中心地域から普通道路利用で約30分)。
※5…トライアル:衣食住の商品がお求めやすい価格で揃うスーパーセンター。隣接の大分市や豊後大野市にある(豊後大野市にあるトライアルは野津中心地域から普通道路利用で約20分)
※6…パークプレイス大分:映画館などが入る複合商業施設。大型電気店も隣接(臼杵市中心地域から高速利用で約40分、野津地域から普通道路利用で約20分)。
※7…浜公園:佐志生地区にある、駐車場やトイレのある砂浜のビーチがある公園。
※8…吉四六ランド:野津地区にある、サッカー・グランドゴルフ等に利用できる多目的グランドや、野球場、テニスコート、ゲートボール場、野外ステージ等があるほか、子ども用の遊具も充実している公園。春には2,000本のソメイヨシノが咲く。
※9…「よむよむの会」の読み聞かせ:読み聞かせボランティアグループが、紙芝居・エプロンシアター・大型絵本などを使って読み聞かせを行う(対象:0歳~小学生までとその保護者)。

写真は全て好川さん提供。
(取材日:2021年3月)

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