私たちのうすき時間

第9回 地域おこし協力隊 有機農業隊員(三重野・阿武)Vol.2

●有機農業・1年目:三重野●

こんにちは!
前回、皆様に開墾の様子などをお届けした三重野です!
今回は、引き続き開墾の様子を! といきたいとこですが……。
予想以上に鹿や猪、竹や草達の遊び場になっていたようで、植えた野菜も直ぐ食べられてしまいました。
種をまいて、苗を作り、畑に定植して……。季節や作物によっては1ヶ月以上の時間が苗作りに必要だったりします。
沢山愛情を籠めれば籠めるほど、心のダメージは大きくなります。

開墾後

猪の遊び場

そんな中、開墾した畑をよく見てみると…… なんと「鹿の角」まで落ちていました。随分と激しい運動会などしているようで、なんか気持ちも少しほっこりしました。

でも良く考えてみたら、今開墾している畑は、人の都合で荒れ果て自然に返り、また人の都合で畑へと開墾される。
畑を荒らした獣たちの大切な「環境」を破壊したのは三重野であり、そこに突然現れた美味しそうな食べ物があれば、頂戴する。極々当たり前で、自然なことなんだぁと思います。
そもそも「農業」は、規則的に単一の植物を栽培し、不要な「その他」の植物を排除することが多く、極端な言い方をすれば人類最初の「環境破壊」なのかもしれません。
そう思ったら腹を立てるのもおこがましいことなのかもしれませんね。
竹や草が枯れ始めたら、防獣ネットや電気柵などでしっかりと「農業」が出来る環境を整備する予定ですが、彼らの大切な「環境」の一部を間借りしていることは、絶対に忘れてはならないと、改めて、学ばせてもらいました。

開墾の様子がお届けできなくなった今回は、栽培方法の違いの「農業」をテーマに書いてみようと思います。
一般的な、化学肥料や農薬を使った「慣行農法」以外にも、世の中、さまざまな栽培方法で育てられた農作物が沢山あります。
「有機農業」「無農薬栽培」「自然農法」「オーガニック」……。
特にインターネット上では上記の謳い文句がついたものが以前より目に付くようになりました。
でも、「イメージ」が先行して実は「良く分かってない」なんてことありませんか?
そもそも臼杵市が非常に力を入れている「有機農業」「ほんまもん農産物」って、なんでしょう?
このあたりを自分なりにまとめてみました。

「有機農業」とは?
1.化学的に合成された肥料、及び、農薬を一切使用しない。※一部の農薬については使用可能
2.遺伝子組み換え技術を使用しない。
3.農業生産に由来する環境への負荷を出来る限り軽減する。

上記の農業生産の方法を用いて行われる農業です。
また、有機JAS登録認証機関が毎年圃場(ほじょう)を検査し、認証を受けて初めて、有機食品に対して「有機JASマーク」や「有機」「オーガニック」の表示をつけて販売することが可能となります。
※参考 農林水産省HP
https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/yuuki/

「無農薬栽培」
その名の通り、生産期間中に全く農薬を使用しない栽培方法を指しますが、生産された農産物に対して、厳格な基準や法律、認定機関等がありません。現在は「無農薬」と表示することが禁止されています。

「自然農法」
これも「無農薬栽培」と同じく厳格な基準や法律、認定機関等はありません。「自然農法」と表示することは禁止されていませんが、自然農法の手法は実践する農家により様々で、不耕起(一切畑を耕さない)や、不除草(除草しない)、無農薬無肥料(肥料や農薬の類を一切使用しない)など、様々な取り組みがあります。栽培方法や考えた方にそれぞれの違いはありますが、自然本来が持つ力や作物の生命力を引き出すことを目的にされている方が多い印象があります。

そして我らが「ほんまもん農産物」
1.化学的に合成された肥料、及び、農薬を一切使用しない。※一部の農薬については使用可能
2.遺伝子組み換え技術を使用しない。
3.臼杵市独自の制度で「臼杵市長」が認証する。

あれ? どっかで見た内容? と思った人もいると思いますが、「有機農業」に臼杵市独自の基準を設けた認証制度で、有機JAS登録認証機関の協力を得て認証審査を行っています。
有機JAS認証を得ようとすると認定手数料がかかりますが、「ほんまもん農産物」は認証審査に掛かる費用は市が補っているので生産者の負担はありません。
また、市内の「ほんまもん」農家を支援するために「臼杵市土づくりセンター」を開設し、草木と豚糞を原料とした完熟堆肥「うすき夢堆肥」の製造販売も行っています。

この「臼杵市土づくりセンター」が作る完熟堆肥「うすき夢堆肥」については、個人的に非常に面白さを感じており、一人のほんまもん農家として個人的考えをご紹介させて頂きたいと思います。

野菜に必要な主な栄養素としては、窒素、リン酸、カリウムがあります。
空気中に存在する窒素ですが、残念ながら植物は直接吸収することは出来ません。土壌等に生息する硝酸化成菌、窒素固定菌などの微生物の働きを通して、初めて植物は吸収することができます。
その一つとして「硝酸態窒素」があります。元々自然界にもあるものですが、農作物を栽培する際に不足しやすい栄養素の一つでもあり、肥料として畑に入れる必要が出てくる場合があります。

この「硝酸態窒素」を畑に「過剰」に散布することを問題視している一部の研究者もいます。
それは、植物が使いきれなかった肥料分は土に残り、雨水などにより地下水や河川に溶け出します。
これは、近年「環境汚染物質」として考えられており、アメリカやヨーロッパ諸国では、日本以上に厳しい基準が設けられていたりします。
植物にとって「硝酸態窒素」は、成長に必須なアミノ酸やタンパク質を合成する貴重な材料ですが、過剰に散布した畑では消化が促進され、急激に細胞が増大することで、通常よりも背丈を伸ばし、葉を茂らし、体内に残留しやすくなります。
植物に残留した状態で、動物(人)が摂取し、体内に残留する量が多いと、消化される過程で「ニトロソアニン」という発がん性物質を作ると言われています。毒性については、研究が進められている段階で、研究者の中では、問題ないと考える人もおり、今後どのような事が判明するのか、非常に興味深い分野ではあります。
2015年より水質基準項目に「硝酸態」「亜硝酸態」窒素は追加されています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics/bukyoku/kenkou/suido/kijun/kijunchi.html

そこで「完熟堆肥」である「うすき夢堆肥」の良さを個人的に強く感じています。
一般的に未熟の堆肥や、家畜等のフンは非常に強い匂いを感じますね。フンは、肥料分の量にもばらつきが大きく、分解するまでの時間も必要とし、また散布する量の見極めについても熟練した農家でなければ非常に難しいと感じます。
その点、「完熟堆肥」である「うすき夢堆肥」は、きつい匂いは驚く程にありません。
これは、製造工程中にしっかりとした切り返しと、水分管理がされ、また、空気を送り込むことで、硝酸化成菌等の微生物が非常に活動しやすい環境が作られることで匂いが減っていきます。
個人的考えではありますが、「うすき夢堆肥」は農作に必要な有機物や微生物の添加と肥料の役割も多少担っているなぁ~と感じます。

今回のテーマのひとつになった「硝酸態窒素」ですが、EUでは作物に残留量に対する基準が設けられていたりします。
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/syosanen/eu/index.html

まだまだ研究が進められている分野ですが、科学の世界は日々進歩する中で「良かった事」が、ある日「良くない事」が分かったり、「悪い」と思われていたものが「良い」と評価される非常に面白い世界だと思います。
参考までに我が国の「硝酸態窒素」及び「硝酸塩」についての、農林水産省のHPです。
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/syosanen/index.html

私個人としては、「安心・安全」な野菜作りを目指すからこそ、「有機」「オーガニック」だから環境に良く、健康にも良い! と盲目的になるのでなく、広くアンテナを張り本質的な「安心・安全」な野菜作りを追求していきたいと考える中で「ほんまもん認証」めちゃめちゃ伸びしろがある! ってことですね。
「有機JAS」及び「有機農業」については、国が作った基準なので、極端な話どこでもできます。でも、経営環境は、個々の自治体や、立地条件で大きく異なります。
誰でも、どこでも出来る代わりに、基準としては標準化されているので、産地やブランドとしての「有機」「オーガニック」という付加価値に留まり、区別化する対象は一般的な農作物が主となり、同じ有機農家同士の区別化は難しく、有機農家同士の「誰もが見える」区別化は、難しいなと個人的には感じています。

「ほんまもん認証」の最大の強みは、自治体主導で、社会環境に合わせて柔軟に対応が可能である部分と感じます。
農業の歴史の中で今後、様々な研究が進むと、正しいと考えられていたことが間違いだったとわかる事も沢山あると思います。
その様な時に、自分たちの地域で創る認証制度だからこそ、社会情勢に合わせた形に柔軟に対応できる素晴らしい仕組みだと感じ、本当の意味での健康な食材を提供できる人間になりたい!“
そんな思いと夢を胸に、週末は「ほんまもん農産物」として栽培されているキウイの収穫のお手伝いや、自分の畑で楽しく「有機農業」に取り組んでいます。

それぞれのやり方があり、個人での動きがまぁまぁ強い「農業」ですが、臼杵市では仲間作りしやすい土壌もあり、新規就農に対するサポートもあり、ここで「就農」する事が出来なければ、どこの自治体でも難しいだろうなと、つくづく感じます。

 


 

●有機農業・1年目:阿武(あんの)●

 協力隊に着任して、3カ月が経過しました。
汗だくになっていた夏も終わり、気持ち良く作業できるようになった秋が来ました。
畑仕事も慣れてきて、トラクター・管理機・草刈機などの機械の操作も不自由なく使えるようになってきました。

耕運機を使った作業

研修先でも自分用の畑(800㎡)を使わせてもらえるようになり、ズッキーニ・ブロッコリー・人参・キャベツの植付けをしました。
ズッキーニは、仕事前に毎日1つ1つに受粉していたのが、収穫でき始めました。200本近く植えていたので、無事収穫できてほっとひと安心で嬉しいものです。

黄色ズッキーニ

収穫したズッキーニは、ふるさと納税の返礼品や保育園給食にも使ってもらっています。

とは言え、失敗も数多くです。
じゃがいもの植付けも行ったのですが、管理不足で雑草を生やしてしまい、機械で終わる作業を手作業で除草をしないといけない状態に。
時間も労力も倍かけてしまい、へとへとになったり……
次の春じゃがいもの植付けは、今回の半分の時間と労力でいい物を作ろうと意気込んでます。

管理不足のじゃがいも畑

こらからの時期は野菜が美味しい時期になるので、収穫が楽しみです。

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